日本が長寿社会になったことで、大きな課題になっているのが介護問題であり、現在では家族の介護をするために会社を退職する人の数が年間約10万人にのぼっています。
今後とも、介護離職者の増加が見込まれるため、政府は介護離職者数の減少を目的とした育児・介護休業法の改正を行いました。
それとともに、家族を介護する社員への支援に取り組む企業に対して、助成金を支給する制度が設けられており、それが「介護離職防止支援助成金」です。
この制度は従来の「介護支援取組助成金」から内容が変更されたものです。
介護離職防止支援助成金とは?
2016年4月に施行された介護支援取組助成金は、従業員の仕事と介護の両立について、介護休業制度を整えるという「取組」を行なった事業主に対して支給されていました。
しかし、2016年10月からの新しい介護離職防止支援助成金は、従業員が家族の介護に従事する際に、会社が支援の一環として当該従業員に「介護休業を与えた後に職場に復職させている」、あるいは「時差出勤などの介護制度を利用させている」などの実績が求められています。
つまり、以前の助成金は「取組」だけで助成金が受給できましたが、新しい助成金はそれに加えて「実績」が必要とされます。
介護離職防止支援助成金の受給要件
助成金を受給するには以下の2つのことを満たす必要があります。
1.職場環境の整備(介護支援取組助成金の時と同じ内容)
従業員に「介護の必要性が発生する前」に、以下の項目を企業として取り組む必要があります。
○仕事と介護の両立に関する実態を把握(社内アンケート)
介護に関する社内アンケートを雇用保険の被保険者全員に対して行います。
なお、常時100人以上の被保険者がいる企業の場合は最低100人以上にアンケートを実施し、「回収率が3割以上」か、「100枚以上の回収」が条件になります。
○社内研修の実施と従業員への周知
厚生労働省指定の研修を行います。研修の方法に関する規定はありません。また、リーフレットの配布や、就業規則への明文化などによって、介護支援体制を全従業員に周知させます。
○介護休業などの社内制度の設計・見直し
介護休業や介護制度の構築、及び見直しを行います。
○相談窓口の設置
介護の必要が生じた従業員に対して相談に応じる担当窓口、担当責任者を決めます。
なお、アンケートや研修用の配布物など、必要な資料は全て厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
2.対象従業員への取組
家族への介護の必要が出た従業員に対し、介護支援プランを作成します。
従業員と面談した上で、「介護休業の取得」か、仕事と介護を両立させる時差出勤などの「介護制度の利用」かを選択してもらいます。
また、介護支援における課題や、配慮すべき事柄などを確認し、従業員に即した仕事と介護の両立実現に向けた計画を立てます。
助成金額
助成金額は「介護休業取得」と「介護制度利用」、また中小企業と大企業で異なります。
支援事業 | 助成条件 | 中小企業 | 大企業 |
介護休業 | 連続1ヵ月または合計30日の利用 | 60万円 | 40万円 |
介護制度 | 連続3ヵ月または合計90日の利用 | 30万円 | 20万円 |
※助成金の支給は1企業当たり2人までです。
助成金の申請
助成金の申請期限は取組によって異なります。
・介護休業:連続1ヶ月または合計30日の介護休業の復帰日から1ヶ月経過する日の翌日から2ヶ月以内
・制度利用:連続3ヶ月または合計90日の制度利用の最終日から1ヶ月経過する日の翌日から2ヶ月以内
介護離職は40~50歳代といった企業において中心的役割を担う世代において最も多くなっています。
企業にとって貴重な人材が失われるということを防ぐためにも、介護離職の防止策は喫緊の課題になっています。
なお、助成金の受給は事前に支援体制を構築しておくことが必要であり、従業員に介護の必要性が生じた時に急に介護支援制度を採り入れても助成金は受給できません。
また、従業員が介護休業を取得した場合は復帰後1ヶ月以上継続雇用することが条件です。